初代、辻留次郎が裏千家の家元に手ほどきを受け、京都に店を構えたのが辻留の始まり。
茶道裏千家より出入を許される、懐石料理の名門です。
その深い味わいを引き出す術は、明治時代から三代にわたり、
現在の辻留主人・辻義一氏に引き継がれています。
辻 義一 〈 つじ・よしかず 〉
昭和8年生まれ。明治時代からの懐石料理の老舗「辻留」の3代目。15歳で料理の道を志し、20歳で料理人で芸術家の北大路魯山人のもとで修行する。
東京・赤坂「辻留」では、料理塾も開いている。
懐石は、調和に始まり調和に終わる、といってもよいほど、器の色、形から味つけにいたるまで、そのとり合わせに心を砕きます。それは、料理を食べていただく方への心くばり、思いやり、親切といったことの表れです。
この調和は、一つのお膳の中だけにあるのではなく、一汁三菜を次々とお客様へ出していくという流れの中にもあります。タイミングよく、流れを崩さずに、お膳を出していくということもハーモニーの上に成り立ちます。
この調和が、決まっていればそれだけ料理もおいしくいただけ、また気分もよいものとなります。
懐石が基本としている形は、形式ということではなく、この調和という一つのスタイルに従っています。形式には制約がありますが、形からは自由な発想が生まれます。懐石は、亭主の心づくしの上に自由に心遊ばせるものですから、それぞれの感性をより高めつつ、美しい形としていまなお残って続いているのです。
たとえば、向付は、器とバランスのとれた、季節の旬の材料で盛り付けされます。この形がきちっときまってこそ、視覚的においしさを感じます。季節をよく表し、デリケートに彩りよく、受け継がれた形を踏まえ、きっちりとスキなく盛り付けられた一椀は、計算された舞台のように美しいものです。そこに食欲をそそられるのが、人の文化といえるものではないでしょうか。
−日本料理を彩る−
うつわと四季の食材
日本には、四季それぞれに豊かな食材があり、持ち味があります。これを生かしきるのが日本料理なのです。辻義一さんの料理は、まさにそれです。飾りたてることなく、季節の味が躍動しています。盛りつけた器の余白が生きています。そのコツは、この一冊にあります。
−エッセイスト 山川 静夫−
辻義一 著/佐伯義勝 写真
定価 5,985円(小学館)
茶の湯実践講座
−辻留 茶懐石 炉編−(左)
−辻留 茶懐石 風炉編−(右)
「お茶一服差し上げ度く・・・」、風炉編では初風炉から名残まで、炉編では口切りから花見まで月々の茶事の趣向に合わせた献立の数々。老舗「辻留」の技とこころ。二冊揃えて座右にどうぞ。
辻 義一 著
定価 各 2,575円(淡交社)
持味を生かせ
−魯山人・器と料理−
魯山人の器に料理を盛ると料理が一段とおいしくなる〜著者の懐石「辻留」主人が盛り、語る、魯山人の器と料理の真髄。本題の他に魯山人に学ぶ旬ものがたり等。
辻義一 著
定価 3,400円(里文出版)
−魯山人と辻留 器にこだわる−
若き日の魯山人との出会いが辻の美意識を決定づけた!
当代随一の芸術家にして美食家の魯山人のもとに、果敢にも単身乗り込んだ「辻留」三代目。今その数々のエピソードをはじめ、辻留流の器使い、盛りつけの極意を明かす。
辻 義一 著
定価 880円(講談社+α新書)